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    缶コーヒーのジェンダー論(2)

    2020.01.08 Wednesday 02:35
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      「ノンカフェインのお茶」のCMの特徴

       せっかくなので、缶コーヒーを足がかりに、飲料品のジェンダー化についてもう少し考えてみよう。缶コーヒーは「男の飲み物」だが、牛乳や砂糖が加わると一気に女性と結びづけられることになる。

      そもそもカフェラテやカフェオレは缶入りのものが少なく、あったとしても単体でテレビCMになることはかなり少ない。ペットボトルや紙パック入りのカフェラテやカフェオレは多いが、そのテレビCMは女性の登場人物が美味しそうに当該商品を飲んだり、女性に人気の男性俳優が当該商品を薦めたりするものが多い。缶入りブラックコーヒーと構図が真逆になっているのだ。

      お茶の場合はどうだろうか。緑茶はあまりジェンダー化されていない飲料の筆頭だ。たしかに顧客層に性別の偏りがあるようには思われないし、テレビCMも男女の役者が同じようなスタイルで当該飲料を飲むものが多い。

      しかしノンカフェインのお茶になると、事情は変わってくる。爽健美茶も十六茶も、テレビCMに登場するキャラクターは女性ばかり(前者は綾瀬はるか、土屋太鳳、榮倉奈々など、後者は新垣結衣などが出演)で、基本的にはキャラクターみずからが美味しそうに飲む姿を視聴者に印象づけるものが多数なのだ(似たようなものとしてノンアルコール梅酒がある、と学生に教えてもらった。たしかにそうだ!)。

      本稿を書くために調べていて思い出したのがサントリーの「黒烏龍茶」。発売当初は円卓を囲んで中華料理をひたすら食べる中年男性が印象的なCMが続いたが、2015年以降ミランダ・カーや中条あやみといった女性が食事のお供に黒烏龍茶を飲むテレビCMに切り替わった。黒烏龍茶は男性向けから女性向けへとそのジェンダー化のあり方が変わった珍しい飲料だろう(男性に黒烏龍茶が定着したから、新しい顧客としての女性に広告のターゲットを絞ったと考えるほうが正確かもしれない)。

       

      三菱電機とパブロンが描く「家族像」

       たしかに飲料品のジェンダー化にテレビCMが影響していると感じてもらえただろうか。ここまでの話題をふまえて以下で考えてみたいのは、ジェンダー化の望ましくなさについての議論とテレビCMの関係である。

      フェミニズムの考え方が社会に少しずつ行き渡るにしたがって、特定の性質や特定のライフスタイルが「男らしい」「女らしい」とされることへの批判も高まってきた。特定の商品を購入し、使用することに関しても同様だ。特に「これは女が買う/使うもの」という考えは、性差別を固定化させるものとして批判されてきた。

      この批判をうけて大きく様変わりしたのが、家電製品のテレビCMである。現行のものだと、三菱電機のテレビCMでは、家事にはだいぶ消極的で妻と実母が旅行に行けばろくに掃除もせず部屋を散らかしてしまっていた若林正恭も、今や妻とともに料理を作ったり、洗い終わった皿を拭いたりしている。パナソニックのテレビCMでは、西島秀俊が奥貫薫ときちんと分担して家事をしている。

      夫婦のあいだでの家事分担だけではない。「女らしさ」を押し付けるテレビCMの問題は親子のあいだの気遣いによっても解決されようとする。有吉弘行が「風邪でも、絶対に休めないあなたへ」と視聴者へ呼びかけながら風邪に苦しむ間に、体調の悪い松嶋菜々子は「あとは私に任せて」と言う頼もしい娘に料理をまかせて、パブロンを飲んで休むのである。

      もちろん、「だから女性は甘やかされている」と言いたいわけではない。「母親は何としても家事を遂行すべし」という規範がCMの中で解除されていること自体は、当然望ましいことだからだ(他方、有吉を休ませない会社や社会の問題については考えなければならないだろう。ある意味でこれは、会社を休むことを何としても回避するよう男性たちに強いる、「男らしさ」の押し付けの一形態かもしれない)。

      ポイントはここだ。テレビCMにあらわれる「女らしさ」の問題、ジェンダー化された商品の問題は、「家族(の絆)」という方向に向かって解除されていくことがかなり多い。「女らしさ」にまつわる問題のうち大きなものの一つは家事労働の負担の重さなので、これは当然である。家事負担の偏りに対処するには家族で分担するしかないわけで、この変化に対応しそれを後押ししようとすれば、必然的にテレビCMは家族の協働を描くものになる。

      援軍となる、すなわち結果として女性の家事負担を減らすような動きは、「男らしさ」と結びついた商品にも訪れている。すき家のCMに典型的なように、「男が掻き込んで食べるもの」としての牛丼が家族で食べるものとして描かれるようになったことで、食事を作る女性の負担は減っているとも考えることができる。

      もっとも、すき家のうな丼やカレーライスのCMでは、ワイシャツノーネクタイのいかにも「昼休みのサラリーマン」といったキャラクターが登場し商品を食べることが多く、いまだに牛丼屋のメニューはジェンダー化されてはいるのだが。

       

      (3)へつづく


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