「ボヘミアの宝箱」とご縁のある皆さま、こんにちは。
店長のビビアナです。
唐突ですが、「もぐらくん(クルテック)シリーズ」の絵本をご覧になったことのある方、いらっしゃいますか?「あれ、なんだっけ?」と思われた方、こちら(
クルテク Krtek チェコから生まれた癒しのキャラクター)をご覧にあると、「あー、あれか!あれって、チェコ人が描いた絵本だったの!?」と驚き、再認識するかもしれません。全然知らなかった方は、結構世界的に有名な「癒しキャラクター」なので、これを機に知っておくと、良いかもしれません。
それを描いておられたやさしいおじいちゃまこと、
ズデニェック・ミレル(Zdenek Miler)さんが、今月の初めに90歳で亡くなられました。
ちょうど1年前の2010年12月7日に、ズデニェックおじいちゃんは、アメリカの宇宙飛行士・フォーステル(Mr.Feustel)さんが、クルテック君をエンデバーに乗せて宇宙に連れてってくれる決心をしたことに、感謝の意を表明していました。(そのニュースは、
こちらから
動画もあります。)
1921年生まれだったズデニェックおじいちゃんは、多くの国で、何世代にも渡るたくさんの人たちに、楽しい気持ちと癒しを与え続けました。「どうぞ天国でも、やさしいクルテックのお話を描き続けて下さいね」と心の中で祈っていた矢先、もう1つのニュースが・・・!
Our first and the last (since 1945) honest president Mr.Havel died (75). His official funeral is most probably this Friday, a day before X-mas. Like his books and theatre dramas.
His last official TV report is 8 days ago with his friend Tibet leader Dalaylama. He said, "My dear friend, I am happy you come to meet me, but I am ill..." Many Czech people understood immediately who will be missing here and what they are loosing.
We commemorated him with many (incl.young!) people in Prague Wenceslaw Square. He was the only mentor and true guardian. He was a visionary.
(訳)
(チェコが共産国になった1945年以降)我々の最初で最後の誠実な大統領・(ヴァーツラフ)ハベル氏が亡くなった(享年75歳。)公式の葬儀は、恐らく今週の金曜日(12/23)、クリスマスの1日前に行われるだろう。まるで彼が書いた小説や戯曲のように。
彼の最後の公のテレビニュースは、8日前に、彼の友人であるチベットのダライラマに会った時のことだった。ハベル氏は言った。「親愛なる友よ、あなたが会いに来てくれてとても嬉しい。だが私は病気なんだ・・・。」この時、多くのチェコ人は即座に悟った。自分たちが誰を、どういう存在を失おうとしているのかを。
僕らは、(若者を含む)多くの人達と共に、プラハのヴァーツラフ広場で、彼を追悼した。彼は(チェコの人民にとって)唯一の指導者であり、本物の守護神であった。彼には先見の明があった。
これは、私の旧いチェコの友人から、昨夜受け取ったメールの一部です。
この友人はいつも陽気で、おかしなジョークばかり言って、少し抜けてる憎めない奴ですが、こんな真剣な文章を書いてくるなんて(というか書けるなんて)驚いてしまった。と同時に、ハベルさんの死が、ふつーの、一般のチェコ人にとって、どんなに大きな衝撃かを、端的に伝えていると思った。
共産主義の圧政下で、一体何度、そして通算すれば何年、収監されていただろう。あらゆる種類の拷問や圧力を受け、ようやく収監から逃れても周囲はスパイだらけで、事実上の監視下におかれながら、不屈の精神で、決して暴力や武器を取ることでは訴えず、民主化を成し遂げた。それだけでも凄いのに、激務と心身の消耗の中で、すべての宗教の垣根を越えた「世界平和会議」も主催した。
私が鮮明に記憶している、ハベルさんの大統領時代の苦悩の1つは、
NATOによるセルビアへの空爆が決まった時だった。チェコは民主化してすぐに、どうしてもロシア(旧ソ連)との距離を置きたいがために、チェコ国内では「それが真に国益か?まだ時期尚早ではないのか?」という声もある中で、「NATOへの加盟」を焦った。焦って、やっと入ったと思ったら、加盟後初のNATOの活動が、かつての盟友・セルビアへの空爆だった。加盟国には、当然兵を出す義務がある。作戦への参加も否めない。
この時、ハベルさんはセルビアの反戦活動家たちからも、懇願されていた。「これまで長い間、同じ境遇で信条を共にしてきたあなたなら、懸命なご判断ができる筈です。本当に、私達の国(=セルビア)への空爆に参加なさるのですか?あなたに率いられることになったチェコが、そのようなことをするのですか?」と。
この時、NATO加盟国にも、セルビアにも、大切な友人がいた程度の私ですら、生きた心地がしなかったのに、ましてや「非暴力での民主化」を貫いたハベル氏にとって、このセルビアの平和活動家からの訴えは、どれほど心に刺さっただろうか。あの時(家族も含め)自分の周囲に、こうした欧州の複雑な事情を語り合える友人がいなかったので、私はただただ一人で、ハベルさんの心中を想った。今日は、その時のことを、ゆっくりと思い出していた。
クルテックを描いたミレルさんと、小説と平和の信念を書き続けたハベルさん。どちらも、「この人がいなかったら、チェコはどうなっていただろう?」と思わずにはいられない、大切な2つの魂だ。
同じ2011年の12月に亡くなられた。「今年の終わりは、悲しみのニュースでいっぱいだ。もうこれ以上はいらないよ。」ー別の、年老いたチェコの友人が、淋しそうに、メールでこう呟いていた。
ズデニェック・ミレルさん、ヴァーツラフ・ハベルさん、長い激動の人生を走り抜かれ、本当にお疲れ様でした。東洋の端っこからですが、お2人のご冥福を、精一杯お祈り申し上げます。
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2011年12月20日更新
<<シードビーズグループの価格改定のお知らせ>>
チェコ本社での改定に伴い、来年より以下の種類のビーズが、5%値上がりします。但し、(ビーズのガラス生地の色がなんであっても、穴の中にシルバーを入れる加工をした)シルバーラインとパラジウムだけは、例外的に12%の値上げとなります。(国際先物市場での銀の価格高騰によるものですが、お客様には大変申し訳ありません。)
対象となるビーズ:ファルファーレ、カットファルファーレ、シードビーズ(極小サイズやコルネリアンカラーも含む)、シャルロット、スリーカットビーズ
「前から、買おうかどうか迷っていた色があったの!」という方、どうぞ年内にご注文をおすませ下さい。12/31までは現価格のままです。
チェコではクリスマスツリーの木の下に置いてあるプレゼントを、子供達がワクワク待つ季節ですが、今年だけは、(命を懸けてチェコを無血の民主化へ導いた)ハベル元大統領の喪に服し、例年より一層静かに、厳かにすごす人々が多くなるでしょう。遠く離れた日本より、偉大なる魂であり、自由と平和の使者であったヴァーツラフ・ハベル氏のご冥福を、お祈り申し上げます。