芸術は、岡本太郎のようにいつも爆発していなくてもいいんです。
人間がつむぎ出すものは、音楽のように手では触れられないものから、絵画のように二次元の世界に限定されるもの、彫刻のように三次元空間にしっかり存在して、見て触れて確認できるものに、まるで異次元空間とコンタクトを取り、その共同作業で創り出しているんじゃないかと思えるものまで、実にいろいろあります。
ビーズは、人類の歴史と同じくらい、その歴史を辿ることができます。最初は、祈りには欠かせない「神とコンタクトを取る者」が身につけるものでありました。素材がなんであれ、何かに穴をあけて通して使い出したのは、この地球上では人間が最初のようです。
私はビーズの中でも、「ガラス製」のものにご縁があり、職業で扱っているわけですが、時々思うことがあります。
このチェコでできたビーズたちで、できるなら一人でも多くの人を幸せにしてみたい。ビーズは1つ1つはそんなに高価なものではないから、誰にでも手が出せるし、使い方も千差万別。でき得る限り、日常生活の中で楽しんでもらいたいな、と。
同時に、こんなことも思うんです。ビーズを触っているうちに、自分の中に眠っている「芸術的才能の扉」を開けてしまう人、あるいは魂の慟哭を、口から表現する代わりに「ビーズを通して、ほとばしらせることができる」ようになる人が、きっと現れてくるだろうと。
後者の中には、厳密に言うとさらに細かい分類があります。なんでもそうですが、何かひとつの道を通して「自分と向き合う」ということは、なかなか心地よい作業ばかりではありません。それを
「どこまで掘り下げるか」は、正にその人次第です。
創作活動を、あくまでも心地良い範囲に留めておこうーこれも、1つの選択だと思います。
のたうちまわるほど苦しみ、もがくーここまで行ってしまうのは、色んな意味で、ごくごく限られた人だけでしょう。
多くの場合、一人の人間として人生を日々重ねながら、どこまで自分を投影させるか、が勝負です。
「自分」というのは、時には向き合うことが辛くなったりもします。ですが逃げられないのも人生ですから、そこを乗り越える手段として、私達はさまざまな「心の励まし」を求めます。
「四神」とは、中国神話に登場する世界の四方向を守る霊獣のことで、一般に「青龍(せいりゅう)、朱雀(すざく)、白虎(びゃっこ)、玄武(げんぶ)」として、日本でもよく知られています。これをなんと、小さなビーズで作ろう!と思いついた人がいます。松本麻紀子さんといいますが、私はなぜ彼女がこれを作ろうと思ったかは知りません。
だけれども、今の日本に、これほど必要なものはない
と感じました。
戦後あらゆる方面から、徹底的に骨抜きにされた日本人。日本人が、日本人であることの誇りを忘れるほどに、経済活動にだけ専心させ、世界の本当の有り様(ありよう)を知ることから遠ざけ、家庭の絆は崩壊し、若者が行き先を求めて彷徨う。気がついてみたら、唯一の金儲けの金(かね)も、散々アメリカに剥奪され、残ったのは不良債権の処理と、暗い表情の人々だけ。
それでも奪う方は飽き足らず、疲れ切った日本人からさらに金(かね)を強奪しようと、自分たちの手先になる政治家と(アメリカで手なずけ、育てた)官僚たちを使って、増税・電気代値上げ・TPP参加・郵政民営化などをしかけてくる。
実はこれらの、日本を裏から操る勢力は、まもなくその実体が暴露され、どんな謀略も、これからは成功しなくなります。日本からすごすごと出て行くしかないし、アメリカの手先として活躍した売国奴たちも、やったことに見合う報いを受けるでしょう。そのことはわかり切っていても、それでも今の日本人の多くは、灰色の顔をしています。目先の心苦しさや、先の不透明感などで、あんまり「幸せな気持ち」を実感できないでいるのです。
みんながんばっていますが、その「がんばり」が一体いつまで続くだろうか、と思いながらがんばっています。ですから私は、この「四神」は中国神話から、松本さんのインスピレーションとビーズを介して、私たち日本人へ届けられた「最高・最大の励まし」である、と捉えました。
「そんな大げさな・・・」と思われる方がいらしたら、どうぞ上野までお出かけ下さい。行って損はしないと思います。入場は無料だし、気持ちにクサクサしたものをお抱えなら、尚更です。
そして松本さんが、「四神」を通して投影した「自己」とは一体なんだったかを、あなたの全身全霊で感じてみるのもよいでしょう。材料の1つ1つは、あんまり高くないビーズです。でもここまでテーマと向き合い、自己と向き合い、東洋の霊的な世界を表出したものは、なかなかありません。
「ビーズで編み出すものが、芸術の領域のどこまで達するか?」というテーマに体当たりした、日本人にとっての記念碑的作品です。
第17回 日本の美術展
2012年2月23日(木) 〜 2月26日(日)
10:00 〜 17:00 開館(入場は閉館30分前まで)
〈入場無料〉
日本画30点、洋画120点、彫塑、陶、工芸、手工芸など 約50点
------------------------------------------------------------------
2012年2月21日更新
2/23(木)〜26(日)、東京・上野の「上野の森美術館」というところで「第17回 日本の美術展」が開催されます。
なんでこんなお知らせをするかと言いますと、この展覧会に日本画・洋画・彫塑などと並び、あるビーズでできた芸術作品が並ぶからです。作品の力強さもさることながら、これが「日本の美術展」に取り上げられたことを、いちビーズ取り扱い業者として、誇りに思います。
それは「四神(ししん)」というタイトルで、松本麻紀子さんが製作されました。お近くの方は、どうぞ足をお運びになって、東洋の四神に込められた躍動感と生命力を、じかにお感じになってみて下さい。
「生きる勇気」を与えられ、それぞれの方への「大いなる励まし」が伝わってくるだろうと思います。