チェコ・スロバキア・ボヘミア | ボヘミアの宝箱 お店スタッフの声

ボヘミアのビール(2)

前回にひき続き、ボヘミアの人にとっての「命の水」(=ビールビール)に
ついてお話ししましょう。

チェコでは、大抵どの町にも「昔から作っている地元の味」のビールが
あります。
歴史が何百年も遡れるもの、有名なもの・無名なもの、色も匂いも、
名前もさまざまですが、どれを飲んでも、誠に美味でございます。

日本のビールと比べて、最も違うのは匂いです。
ゴクっと飲んだ時、ちょうど喉仏の辺りを通る時に、香り豊かなビールの
場合、ほわ〜んと鼻の奥に何かが立ちこめます。言葉で表現するのは
難しいですが、日本のビールには絶対ない「不思議な香り」が、つーんと
鼻の方へくるのです。
初めて飲んだ時、「なんだこりゃ!?」と思いました。しばらく続けて
飲むと、それがくせになり、今度はその香りがないと淋しく感じてしまい
ます。そうなれば、立派なボヘミアンビール愛好家。

日本には「ピルゼン」も「ブドワイズ」も、瓶詰めや缶のものが多少輸入
されていて、たまーに珍しもの好きな酒屋さんに置いてあったりしますが、
それらには保存料が入っていて、どうしても現地で飲む「生ビール」の味
には劣ってしまいます。
というか、比べられません。それくらい、おいしいビールは生で、現地で
飲まなきゃ意味がないんです。

もひとつ、おもろい話をしましょう。
昔出張でチェコへ行った時、本社の同僚にこう頼みました。
「外国人相手のかっこつけたレストランじゃなく、現地のおっさんしか
行かないような、チェコの本当の『居酒屋』に行ってみたいんだけど」と。
本社の同僚(男性2人)は、一瞬ぎょっとした顔をしました。
で、しばらく2人でぼそぼそと話し、「あのさ、マジで驚かない?お世辞
にもきれいやオシャレじゃないし、君みたいな若い女の子(←その時は20
代)、ましてやアジア系の顔をした子は絶対にいないから、ジロジロ見ら
れたりするよ。君が飲めるのは知ってるけど、ほんっとに行きたいの?」
って。
ああ、ごちゃごちゃうるさいなー。あたしゃ、こまけーことは気にしない
んだよ。ウマい酒が飲めりゃいいじゃないか、っていう娘の皮をかぶった
おやじなんだから、とっとと連れてってくれよ!!ってなわけで実現。

この日、仕事が終わるのが待ちどおしかったねー。(大事な客を連れて
ものすごくまじめな商談の通訳をしておったんですがね。)
さて、仕事後、いざ居酒屋へ!
わー、きったねー。ほんっとにおっさんしかおらーん。みんながこっちを
見るよー。気にしたこっちゃねぇ。早速ビールを注文。ウマいっ!!
夏だったもんだから、いくらでも飲める。
チェコの居酒屋のとっても素敵なシステムラブ。普通日本なら、ビール
のおかわりをする時、「すいませーん、ジョッキもう1つぅ!」と店員さん
に頼みますよね?チェコではね、ビールは500mlのジョッキが最小サイズだ
けれども、それがなくなってくると、ミニスカートはいたねーちゃんが、
自動的に満タンの次とグラスと取り替えてくれるの。
で、ボロボロのわら半紙みたいな紙に、鉛筆で何杯飲んだか線を引っ張って
いく。帰る時に、その線の数をかぞえて、お金を払って帰るというわけ。

だから、何も言わなきゃ、延々と自動的におかわりがくる。
まあ、なんとワンダフルなシステムなのでしょう!
いらなくなったら、「もういいよ」って言えばいいんですが、チェコ人は
なかなか言いません。私もそんな雰囲気につられて、どんどん飲んじゃい
ました。気がついたら7杯、えっ、それは3.5リットル飲んだってこと!?

で、もっとおもろいのが、だーれも「つまみ」を食べてないってことです。
地元の居酒屋に来るおっさん方は、皆うちで軽い夕食を取ってから来ます。
飲み屋に来たら、基本的に「酒しか飲まない。」それも欧州人は、あんまり
ちゃんぽんとかもしませんから、今日はワインと決めたらワイン、ビールで
始まれば、最後までビール、と1種類のお酒を、つまみなしで、延々と
飲むのです。
ボヘミアの場合は、99.9%居酒屋でビールを飲んでます。

これと比較すると、日本人の飲み方はとっても健康的ですよ。
冷奴に枝豆にと、体にいいものばかりつまんで、飲酒してますから。
平均寿命が長い筈だよなぁ、と私はボヘミアの地で、妙に納得。
同時に、もし自分がここに住んでいたら、間違いなく中年でドラム缶サイズ
の体格になり、還暦を迎えずして肝硬変で死亡かな・・・?と思ったりして。(苦笑)

確かに、チェコ人の平均寿命は、あんまり長くなかった気がします。
でも彼らに、「ビールを飲まないで長生きしたいか?」と聞いたところで、
愚問です。一笑にふされて終わりでしょう。
「命の水」なんですもの。ビールと共に人生をおくる国なのです。
それがボヘミア。

お話は、まだつづきますよ〜。
今夜はこのへんで。さよなら、さよなら、ナスフレダノゥ(=チェコ語で
さよなら。)

ビール全編読みたい方は、こちらからどうぞdown
ボヘミアのビール(1) 2009.02.01
ボヘミアのビール(3) 2009.02.14
0

    ボヘミアのビール(1)

    さて、お店のドメイン引っ越しでバタバタし、しばらく新ネタを書く暇がありませんでした。
    今夜は、アクセサリーをちょっと離れて、ボヘミアの「命の水」についてお話ししましょう。

    皆さん、「国民1人あたりの年間ビール消費量が、世界で一番多い国」って、
    どこだと思われますか?
    ドイツ!−そう、私もそう思ってました、統計を見るまでは・・・。
    実は、ぶっちぎりの1位は「チェコ共和国」なのです。

    グラフを見るとおもしろいんですが、1位だけがびよーーーーんと突出してます。
    2位はドイツなんですけど、なにせ1位と2位がもんのすごく離れてる。
    これはどうしたことか!?と思うくらいに。
    そして2位以下は、大した差もなく、どんぐりの背比べ程度に下降していきます。

    日本では、「ビール」っていうとドイツやベルギーのイメージがありませんか?
    チェコのビールや、チェコ人がこんなにたくさんのビールを飲んでいること、誰も
    知りませんよね?そこで今夜は、私が解説しましょう。
    ボヘミアの「ビーズ」と「ビール」を語らせたら、私より詳しい人は、日本に
    なかなかいません。(←変な自慢)

    まずはビールの原材料ホップについて。
    世界で最も良い品質のホップがとれるのは、現在のドイツ・ミュンヘンからチェコ共和国を楕円でくくった辺り。
    日本でも、大手ビール会社がチェコのホップを輸入し、ビールを製造しています。
    ビールには、「ピルスナー」「バドワイザー」など、世界的に知られた名前がありますが、これがチェコに実在する「ピルゼン」「ブドワイズ」という街の名前を英語読みしたものだ、ということを知る日本人はあまりいません。
    日本で作られる大手ビールは、全て「ピルスナー製法」という作り方。
    ビールを飲む細長くて、短い足のついたグラスは、一般に「ピルスナーグラス」と呼びますね。

    「バドワイザー」は、恐らくチェコかその周辺から移民した人がアメリカで作り始めたビールに、英語読みしたその名をつけたのでしょうが、これが結果として大変失礼なことになってしまった。ビールが好きな人ならおわかりになると思いますが、アメリカのバドワイザーは、お世辞にもウマいとは言えません。
    本家本元のチェコの「ブドワイズ」が、濃厚で重圧、飲みごたえのある、通に好まれる味のビールであるだけに、大変な誤解を世界中に作ってしまった。
    自国のビールの旨さを、戦後の社会主義時代に、西側諸国に宣伝してこなかったチェコにも責任はありますが、とにかくボヘミアのビールは、日本であまり知られていないだけで、実は味も消費量も、グンバツの優れものなのです。

    消費量が、なぜぶっちぎり世界一なのか。
    これは単純に、チェコ国内で価格が安かったから、が第1にあげられる理由でしょう。
    経済恐慌のここ2年あまりはおいといて、ひと昔まで、ビール1杯(500ml)ビール
    50円くらいでした。
    チェコでは、ミネラルウォーターより安い飲み物だったのです。
    おまけにチェコの人は、ビールなんかでは酔いません。
    ビールはアルコールではなく、生活の中に欠かせない空気のようなものですから、
    喉が渇けば午前でも昼でも、普通に飲みます。
    最近はどうだか知りませんが、旧体制の時は、別に仕事中にビールを飲んでも、
    私達がオフィスでコーヒーを飲むのと同じ感覚で、誰もどがめないし、罰せられない。
    とにかく普通のことなんです。
    私も出張でチェコの本社に行った時には、必ずランチタイムに、本社の偉い人や同僚と、
    普通にビールを飲んでました。お酒に強い私も、ビールではなかなか酔いませんから、「いや、こりやウマいなぁ。日本でより堂々と飲めて、『酒飲みの主権』が守られているではないか。この点だけとってみれば、なんてよい国なんだ・・・」
    と心中思いながら、そのお求め安さ(=価格)にも感動していたものです。

    ガラス職人のおじさま達には、すばらしい特権がありました。
    年中1000度以上の釜の前でガラスを吹いている職人達は、定期的に水分補給をしないと脱水症状を起こしてしまいます。なのでいつも「何か」を飲みながら、働かねばなりません。
    その「何か」は、もちろんビールでした。
    彼らの水分摂取量は、さすがに他の職業の人より多いので、アルコール度数が特別に下げてある「職人用ビール」なるものが存在します。それをちびりちびり、夏になればぐびぐび飲みながら、美しいボヘミアガラスを創り出すわけです。
    昔、工場でおじさん達に、そのビールを飲ませてもらいましたが、なかなかいける味でした。
    お酒に弱い日本人なら、あれでも1本飲めば十分に酔いますわ。

    そんなわけで、ボヘミアにおいて、ビールはまちがいなく「命の水」です。
    話にはながーいつづきがありますので、今夜はここまでとしましょう。
    次回を、お楽しみに。

    ビール全編読みたい方は、こちらからどうぞdown
    ボヘミアのビール(2) 2009.02.05
    ボヘミアのビール(3) 2009.02.14
    0

      ボヘミアの不況は、どんなものか

      金融危機による世界恐慌が言われだしたのは昨年9月末からですが、
      チェコ共和国では、昨年の初めからとっくに「大恐慌」状態でした。

      なにから説明したらよござんしょか。
      チェコは15年ほど前に「ビロード革命」と呼ばれる無血革命により、スロバキアと分かれてから、いくらかの困難を味わいながらも、旧東欧諸国の中では順調に経済発展をしたのでした。NATOに入り、EUに入り、日本で消費税が上がる2011年頃には、通貨もユーロにあわせようとしています。

      こうした動きに伴い、避けられないのが、物価と人件費の上昇です。
      かつて日本政府から「後進国」とみなされていたチェコは、輸入関税がかかりませんでした。EUに入っちゃったら、そんなわけにはいきません。関税がきっちりかかり、ガラスパーツの原材料が高くなり、人件費が倍増すれば、チェコ製の物品が高くなるのは当然。
      おまけに昨年は、自国の通貨「コルナ」が外貨に対してもんのすごく強くなっちゃったので、チェコの輸出企業には踏んだり蹴ったりの状況なわけです。

      日本でも円高が進むと、海外へ輸出している巨大企業が、為替損益だけで赤字になったりしますね?あれと同じ、いやもっとひどい状況が、チェコでは既に起きていたのです。
      15年位前までは、1チェココルナは3.5〜4円位でした。昨年の夏、1コルナが10円まで上がった時には、「プラハへ旅行で行くなかれ」とすら思いました。だってチェコで同じ買い物をしても、前より3倍お金がなくなっちゃうんですよ!
      チェコ政府が遅すぎる為替への介入をして、今は6〜7円に落ち着きましたが、対ドル、対ユーロでは相場の変動も違っていて、なかなか先が読めません。チェコから輸入したい日本の企業は、大抵ユーロで決済します。ところがユーロー円間の相場も乱高下が激しいため、一体どんな値づけをすれば損がないのかわからなくなるほど、チェコからの輸入品の値づけは難しくなりました。

      ボヘミアンガラスビーズの輸出の歴史は長いざんす。チェコスロバキアができる第2次世界大戦は勿論のこと、ゆうに200〜300年は遡れます。
      お客様は世界にまたがりますが、よく知られているのがアフリカのマサイ族と、カナダの先住民族ですね。どちらもファッションのためではなく、宗教儀礼や、位の高い人の衣服につける「大切な原料」としての需要です。今は、観光のみやげ品作りにも欠かせない材料の1つになってますけどね。

      ここ30年位の最大消費国は、北米(特にアメリカ合衆国)です。アメリカでは、ビーズを材料に色んなものを作る趣味がさかんです。裾野が広いし、市場も広いので、日本の企業に比べれば輸入量が桁違いに大きいのです。言い換えると、「合衆国での消費がつまづくと共倒れしかねない」ということ。
      なんでも一国依存はよくありませんね。
      でも、チェコのビーズ工場は合衆国に肩入れしすぎました。その結果、合衆国に端を発する経済恐慌=消費の冷え込みが起きたら、ものの見事に影響を受けちゃいました。
      「物価の上昇」「コルナ高」「(昨年夏だけとはいえ)燃料の高騰」「最大市場の消費の冷え込み」−こうしたボディーブローの連発で、ボヘミア地方では、廃業したり倒産したりするビーズ工房やアクセサリーメーカー、小規模の輸出会社が続出しています。
      廃業したビーズ工房のおじさんが、トラックの運転手になれれば、まだラッキーな方。何世代にも渡り、炉の前でガラスだけを吹いてきた職人の息子たちは、これから全く新しい仕事を探さねば、家族を養えなくなりました。

      なんとか生き残るガラスメーカーや輸出会社と日々交渉をするわけですが、最近は「商談」というより
      「ボヘミアの伝統を消してはならん!!」
      という使命感?!に燃えて、私も主人もがんばっています。

      生き残るガラス工房の職人は、9世紀から続く伝統産業の灯火を、次世代に継げるかどうかの命運を握りながら、家族と己の誇りを守るために、今日も世界からの注文を待っています。
      そのつなぎ役になれればと、南蛮貿易(=「ボヘミアの宝箱」)もともに動いているわけです。
      0

        ボヘミアのクリスマス

        今日と明日、(特殊な仕事を除いて)ヨーロッパで働く人は、まずいないでしょう。どんな悪いヤツでも、1年のうち、ちょっとだけ心があたたかく、やさしくなる日。それが12月24日と25日です。

        今日は、ボヘミア地方のクリスマスを紹介しましょう。
        12月になると、氷点下になる寒さは一層厳しくなりますが、国全体はハッピーな空気に包まれます。各家庭で、お母さんが「ツックロビー」と呼ばれる様々な形をしたクッキーを作ります。それを食べながら、子供達はクリスマスイブの日を、指折り数えて待ちます。そのルンルン♪ワクワク待つ日々が、一番楽しいのかもしれません。
        イブの数日前から、お母さんは忙しくなります。日本の元旦におせち料理があるように、ボヘミアでも昔から食べられている「クリスマス料理」があります。
        メインディッシュは、なんと鯉(こい)!!
        海に面さず、魚介類はさっぱり食べないボヘミア(今のチェコ)の人達が、なぜこの日だけ鯉なのか?それは聖書の一説に由来しています。
        第2次大戦後、共産国家になっていた時期もありますが、元々この地方は中世以来ずっと、カトリックの人が大半を占めます。なんてったって「ボヘミア王国」が隆盛を極めた頃は、国王カレル4世は神聖ローマ帝国(東ローマ帝国)のカール1世を兼ねてたんですから!

        日本では、鯉は刺身なんかで時々食べますが、ボヘミアのクリスマスでは切り身に小麦粉をはたき、ムニエルで頂きます。但し、骨が多いので、食べるのは難解。日本ほど魚を食べ慣れていないボヘミアでは、大人も子供も苦労して食べることになります。しかし伝統の味として欠かせないため、1年に一度だけ不便な思いをして、皆鯉を食べます。
        それとは別に、鯉の形をしたケーキも作ります。上にはたーっぷりとシュガーがかかっていて、私達なら見るだけで「うわ、あまっ!」と警戒する位。その他にも色々なものをお母さんが用意するのですが、とにかく甘い。人間は、一度にこんなに糖分を摂取できるものなのか!?と驚嘆するほど、甘〜い食べ物ばかり、出てきます。それらを、26日までかかって、暖炉の前でだーらだら食べ続けます。太りますが、仕方ありません。それがクリスマスなんですから。
        24日の夜は、ツリーの下に置いたプレゼントを、家族で明けあってきゃーきゃー騒ぎます。このイベントのために、みんなプレゼント探しを一生懸命するんです。正に、家族愛を確認し合う瞬間ですね。

        普段はあっつい炉の前で、懸命にガラスを吹いたり、ビーズを型押ししている職人さん達も、今日から年始までは、釜の火を止め、ゆっくり休みます。
        職人さん、輸出手続きに奔走したボヘミアの皆さん、1年間ごくろうさまでした。
        世界は大変な経済情勢になりつつありますが、来年も美しいガラスをいっぱい作って下さい。その価値を日本の皆様に知って頂きながら、喜んで買ってもらえるよう、来年もがんばります!
        0

          << | 2/2PAGES |

          calendar

          S M T W T F S
          1234567
          891011121314
          15161718192021
          22232425262728
          293031    
          << December 2019 >>

          selected entries

          categories

          archives

          profile

          search this site.

          mobile

          qrcode